武術の師匠である甲野善紀先生から推薦文を頂いたので、載せたいと思います。
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井上欣也氏と初めて出会ったのは2007年の秋、自由が丘の読売文化センターの講座であった。初対面の時から明るい感じの好印象があり、「ああ、こういう若者は人に好かれるだろうな」と思った記憶がある。ただ、そうした明るい感じの人物は、武術のような世界の探究心はそれほど強くないというのが、私がそれまでの経験で得た実感だったから、この人物が、まさか後々ずっと私の稽古研究にとっても得難い相手の一人になるとは全く想像していなかった。
ところが、この当初の私の予想に反し、井上氏は武術の研究にのめり込んで来て、当初は簡単に崩れていたのが次第に崩されにくくなってきて、その技の研究は大いに進展してきた。特に私の手を掴む「掴み技」に関しては、私が「井上持ち」という名前をつけたほど崩されにくい持ち方を創案。いつしか私にとって貴重な稽古相手となっていた。そのため、私が月二回メールマガジン『風の先・風の跡』を出している「夜間飛行」からの依頼で、2013年から毎年一回出しているDVD「甲野善紀技と術理」シリーズに「受け」として欠かさず出演をしてもらっている。
そうしたわけで、井上氏の技と探究心、そして人柄は、この9年間見ていて、私も本当に信頼出来る感じがする。井上氏もせっかくここまで研究を深めてきたので、もし機会があれば、この武術によって開発された体の使い方を、これを求める人に指導するよう勧め、この私の勧めにより介護やスポーツ等への指導を始められているようだが、なかなか好評のようである。教えるということは、自分自身にとっても大きな学びになる。今後ますますの活躍を願って、最近「松聲館技法研究員」に任命した。「松聲館技法研究員」とは、私の道場、松聲館は、すでに2003年に会も解散し、私も単独で活動しているのだが、私の武術に強く関心を持って研究協力を惜しまず、そして現に私の武術研究に寄与している人に、私から贈っているもので、現在まだその数は10人といない。
今後、井上氏の元から今までの体育やスポーツ等では得られなかった体の使い方を身に付け、活躍する人たちが生まれれば、それが井上氏の指導力の証しとなる事だろう。そうした人たちが育つことを祈って推薦の辞としたい。
松聲館主 甲野善紀
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